お子さんがいらっしゃる患者さんから、「子どもに矯正を受けさせたいけど、いつ始めればいいですか?」「まだ永久歯に生え替わっていないけど、矯正治療はできるのですか?」といった質問をよくいただきます。
このように、お子さんの歯並びでお悩みの親御さんは多くいらっしゃいます。しかし、最適な治療開始時期は、それぞれのお子さんのお口の状態によって異なり、一概に「●歳になったら矯正スタート」と言うことはできません。最適な治療開始時期を知るためには、できるだけ早期に歯科医院でカウンセリングを受け、相談してみることが重要。そこで今回は、予備知識として、お子さんの矯正治療の内容や流れについて解説していきましょう。
そもそも、子どもの矯正は治療の時期・内容によって、「第一期治療」と「第二期治療」に分けられます。
第一期治療(早期治療)とは?
第一期治療は、乳歯の時期(乳歯列期)や、乳歯と永久歯が混ざっている時期(混合歯列期)に行う矯正治療です。目安は、前歯と六歳臼歯が生えて完成する7~8歳位です。早い時期に歯並びが乱れる要素を見つけて改善するとともに、顎の発育をコントロールすることで永久歯が理想的な形で生えてくるように導くのが第一期治療の目的。一般的には、寝ているときに取り外し式の装置を装着することで顎の正しい発育を促します。
乳歯列期の場合
乳歯列期から矯正治療を始めるケースはそれほど多くありません。通常は経過観察をしながら、必要に応じて舌を出すクセや指しゃぶりのクセなど、将来的に歯並びに悪影響を及ぼしそうな悪癖を改善していきます。
お口まわりの悪癖
たとえば、口呼吸のクセがある子はいつも口を開けているため、歯を唇で押さえる力が弱くなり、筋肉のバランスが崩れ、出っ歯やすきっ歯、受け口を引き起こしやすくなります。また、指しゃぶりのクセがあると、指の力で歯が動いてしまい、出っ歯や開咬の原因になります。その他、「前歯で下唇を噛む」「舌で歯を押す」「頬杖をつく」などのクセは、どれも歯や顎の正しい成長を妨げ、歯並びを乱す原因になるので注意が必要です。
混合歯列期の場合
乳歯と永久歯が混ざった混合歯列期は、顎の骨の成長期にあたります。たとえば、反対咬合の場合や永久歯が生えるスペースが足りない場合など、骨格の改善が必要なお子さんはこの時期に治療を開始します。治療後、すべての歯が永久歯に生え替わるまで経過を観察し、永久歯列期になったら第二期治療を開始するのが一般的です。
第一期治療を受けるメリットは?
「第一期治療と第二期治療、2回も治療を受けるのは子どもがかわいそう・・・」「本当に第一期治療は必要なの?」と考える親御さんは多いかもしれません。しかし、顎の成長が盛んな時期に第一期治療を受けておくことで、以下のようなメリットが期待できます。
・顎の骨の成長に合わせて治療できるため、効率的に歯列を動かすことができる。
・永久歯が生えるスペースが不足していても、そのスペースを確保しやすくなる。
・顎の発育や歯並びに悪影響を及ぼす不適切なクセを改善しやすくなる。
・第二期治療の期間を短縮できる可能性が高くなる(場合によっては、第二期治療が不要になることがある)。
・第二期治療を行う場合も、抜歯を要する可能性が低くなる。
第二期治療(本格治療)とは?
第二期治療は、すべての乳歯が永久歯に生え替わってから行う矯正治療。永久歯が生え揃う時期は個人差がありますが、10~15歳で第二期治療を開始するケースが多いようです。顎の骨格がある程度固まっている状態で永久歯を動かし、きれいな歯並び・正しい噛み合わせを得ることが第二期治療の目的。基本的に、成人の矯正治療と同じようにワイヤーやマウスピースなどの矯正装置を装着することで、少しずつ歯を動かしていきます。
グラントウキョウスワン歯科・矯正歯科 院長より
上述した治療開始時期はあくまでも目安であり、たとえば、開咬や交叉咬合などは4~5歳の乳歯列期に治療を始めたほうがよい場合があります。また、第二期治療でも出っ歯の場合は顎の成長を利用して改善するため、早めにスタートすることが多く、受け口の場合は逆に、骨の成長が緩やかになってから開始するのがよいとされています。このように、歯並びや顎の状態によって矯正治療を始める時期は変わってきますので、お子さんの歯並びが気になったら、まずは歯科医院に相談してみるのがいいでしょう。
次回の歯科コラムは、8月8日(月)の公開を予定しております。ぜひ、お楽しみに。