「フッ素が子供の虫歯予防に有効だ」という話を、聞いたことがある親御さんは多いでしょう。欧米などでは、虫歯予防にフッ素を用いるのは当たり前のことになっており、フッ化物を水道水に添加して虫歯予防を図る「水道水フロリデーション」を行う国も増えています。
日本でも「子供の虫歯予防と言えばフッ素」という認識が広まりつつありますが、一方で、フッ素の効果を疑う意見があるのも事実です。「実際のところ、フッ素ってどうなの?」という親御さんのため、今回はその効果について解説していきましょう。
フッ素の効果とは?
子供の虫歯予防にフッ素が有効であるという研究論文は数多く発表されています。近年、日本人の虫歯の数が減少しているのも、フッ素配合の歯磨き粉が普及したのが大きな要因だと考えられています。以下の3点は、フッ素の主な効果です。
初期の虫歯なら治せる!
フッ素には、歯から溶け出したカルシウムやリンの再石灰化を促進する働きがあります。お子さんの歯に継続的にフッ素を塗布することで虫歯の進行を抑制でき、初期の虫歯であれば治癒するケースもあります(進行した虫歯は、フッ素塗布で治癒することはありません)。
虫歯に強い歯にできる!
フッ素を塗布すると、歯の表面のエナメル質と結びついて「フルオロアパタイト結晶」という硬い構造になり、酸に溶けにくい強い歯になります。特に、お子さんの乳歯や生えたての永久歯はやわらかいので、フッ素塗布で歯質を強化することで効果的に虫歯を予防できます。
虫歯菌の働きを抑えられる!
虫歯菌が出す酸によって歯が溶かされるのが虫歯のメカニズムですが、フッ素にはこの虫歯菌の活動を抑える働きがあります。虫歯菌の活動が弱まれば産生される酸の量も減り、歯が溶けるリスクも低減されます。
フッ素の効果を倍増させるには?
フッ素を取り入れる方法は、大きく2つあります。1つ目は、ご自宅での歯磨き。フッ素配合の歯磨き粉を使うことで、日々のブラッシングからフッ素を取り入れることができます。2つ目は、歯科医院で「フッ素塗布」を受けること。歯科医院で使われるフッ素は高濃度なので、より高い効果が得られます。フッ素塗布による虫歯予防の効果は永続するわけではありませんので、3ヶ月~半年に1回のペースでお子さんにフッ素塗布を受けさせてあげるのがおすすめです。フッ素配合の歯磨き粉を使った毎日のブラッシングと歯科医院でのフッ素塗布――この2つを併用することが、お子さんの歯を虫歯から守るための基本です。
フッ素って安全なの?
一時期、フッ素の安全性を疑問視する声もありましたが、WHOをはじめ、世界各国の医学専門機関がフッ素の安全性を認めています。たしかに、フッ素を摂取しすぎると腹痛や吐き気などが現れることもありますが、こういった中毒症状は、現実的にはあり得ない量のフッ素を継続して摂取しなければ現れません。歯磨き粉に含まれるフッ素も歯科医院で用いられるフッ素も、安全性に問題はありません。
新宿スワン歯科・矯正歯科 院長より
お子さんの虫歯予防のためにフッ素を取り入れる親御さんは多くいますが、「フッ素配合の歯磨き粉だから安心」「フッ素塗布を受けたから大丈夫」と考えるのはいけません。フッ素だけで虫歯を防げるわけではないのです。虫歯予防の基本は、正しい食生活と歯磨きです。3度の食事をよく噛んで食べ、甘いものは控えめにして、食後には歯を磨く――こういった生活を習慣づけたうえでフッ素を活用していけば、虫歯知らずのお子さんになってくれるでしょう。
次回の歯科コラムは、8月29日(月)の公開を予定しております。ぜひ、お楽しみに。