インプラント治療は顎の骨に穴を空け、そこに人工歯根埋め込んで固定する治療です。そのため、「顎の骨の量」が一つの重要なポイントになってきます。「インプラント治療を受けられない人がいる!?」でもお伝えしましたが、インプラント治療を受けたくても断られてしまう場合の多くは、顎の骨(特に上顎の骨)が少ない患者様です。
しかし、骨の量が少なければ100%インプラント治療を受けられないかと言ったら、決してそうではありません。今回は、顎の骨が少ない方がインプラント治療を受けるための「造骨法」という技術について解説していきましょう。
造骨法を受ければインプラントを入れられる!?
顎の骨が足りない状態では、インプラントと骨がしっかりと結合・定着しにくくなります。そのため、CT撮影などの精密検査を受けた段階で「インプラントができない」と診断されてしまうケースもあります。
骨が足りないなら増やせばいい――そこで登場したのが、造骨法(骨造成・骨再生)です。文字どおり、造骨法とは顎の骨を増やして厚くする技術のことで、インプラントをしっかりと結合・定着させるために土台である顎の骨を強化することを目的としています。顎の骨が少ない方でも、造骨法を行うことによってインプラント治療ができるようになるケースは多々あります。
どうして顎の骨が足りなくなるの?
そもそも、なぜインプラントを入れられないほど、顎の骨が薄くなってしまう方がいるのでしょうか? 主に以下の3つの要因が考えられます。
歯周病の進行
歯周病が進行すると顎の骨が溶かされ、骨の幅・厚みが失われていきます。
加齢
個人差はありますが、顎の骨は年とともに痩せていきます。
長期間の入れ歯・ブリッジの使用
入れ歯・ブリッジを使っている方は噛む力が顎の骨に伝わりにくく、その部分の骨が萎縮して痩せていきます。歯が抜けたままにしている方も同様です。
代表的な造骨法
代表的な造骨法をご紹介します。どの方法を用いるかは、患者様の状態やご要望から判断されます。
GBR
骨を再生させるスペースを確保して骨の再生を促す治療です。骨が不足している部分を「メンブレン」という人工の膜で覆ってスペースを設け、そのなかに移植骨や骨補填材を詰めて骨の再生を導きます。通常はインプラントの前にGBRによって必要な骨をつくりますが、インプラントの埋入と同時にGBRを行う場合もあります。
サイナスリフト
上顎の奥歯部分の骨が非常に薄い(5mm以下)場合に行う治療です。上顎の骨の上(目の下・鼻の横)には上顎洞(じょうがくどう:サイナス)と呼ばれる空洞がありますが、歯を失うとこの空洞が広がっていきます。サイナスリフトは、広がったサイナスの横から移植骨や骨補填材を入れることで骨の厚みを増やします。サイナスリフトで骨を再生させてからインプラントを埋入する場合と、サイナスリフトと同時にインプラント治療を行う場合もあります。
ソケットリフト
上顎の奥歯部分の骨が薄い(5mm以上はある)場合に行う治療です。インプラントを入れるために空けた穴から上顎洞(サイナス)の底を特殊な器具を使って押し上げて、そこに人工骨などを入れることで不足した骨の厚みを取り戻します。通常、ソケットリフトはインプラントの埋入と同時に行います。
院長より
今回ご説明した造骨法は、高度な技術と知識、それを実施する体制が求められることもあり、どこの医院でも受けられるわけではありません。歯周病などで顎の骨が少ないと診断され、インプラント治療を断られてしまった方も、造骨法によって治療が可能になるかもしれません。まずは一度、造骨法に対応している歯科医院で相談されてみてはいかがでしょうか。
次回の歯科コラムは、7月7日(木)の公開を予定しております。ぜひ、お楽しみに。