インプラントの基礎知識(1)チタンと骨が結合する!?

歯科コラム COLUMN

インプラントは、失った歯の部分に人工歯根を埋め込んで歯の機能を回復させる治療法。このことは、みなさん何となく知っていることだと思います。では、右のなかから「インプラントはどれでしょう?」と聞かれたら、どれを選びますか?

インプラントってどの部分?

インプラントと聞いたら人工歯、つまり白い歯の部分を思い浮かべる方もいるでしょう。また、顎の骨に埋め込むネジの部分をイメージする方も多いでしょう。「ネジも人工歯も引っくるめてインプラントだ」と考える方もいると思います。

正確に言うと、インプラントはネジの形状をした「人工歯根」の部分を指します。とはいえ、人工歯も含めて全体でインプラントだと捉えるのも間違いとは言えません。

注意したいのは、インプラント治療の費用を確認するときです。「インプラント●●円」と聞いて、人工歯まで含んだ値段だと思っていたら、実はネジの部分だけだったという勘違いは少なくありません。人工歯と人工歯根の費用を分けて設定している医院もあれば、すべて込みの料金で案内している医院もあります。インプラント治療の費用を調べるときは、人工歯まで含むトータルの費用なのかも確認するようにしてくださいね。

インプラントの構造

インプラントは、「人工歯根」+「アバットメント」+「人工歯」が揃ってはじめて役割を果たします。

人工歯根

インプラントそのもの、つまり「ネジ」の部分です。「フィクスチャー」「インプラント体」と呼ばれることもあります。素材にはチタンが使われています。

【オッセオインテグレーションって何?】
インプラントの起源は非常に古く、紀元前まで遡ります。歯が抜けたところにエメラルドや象牙、鉄や石、動物の骨などが埋め込まれた人骨が発見されており、大昔から様々な試行錯誤が繰り返されていたことが伺えます。インプラントの歴史で最大の転機になったのは、1952年。スウェーデンのブローネマルク博士が、骨とチタンが拒否反応を起こすことなく、完全に結合する現象「オッセオインテグレーション」を発見したことがきっかけになりました。オッセオインテグレーションを歯科に応用して、現在のチタンインプラントは誕生したのです。

アバットメント

人工歯根と人工歯を連結する結合部です。インプラントメーカーによって素材や形状は変わってきます。

人工歯

直接食べ物を噛む、いわゆる「歯」の部分で、「上部構造」と呼ばれることもあります。代表的な素材は以下の4つです。

【メタルボンド】
内側が金属で外側がセラミックでできた素材。強度に優れていますが、金属の種類によっては金属アレルギーの原因になることがあります。

【ハイブリッドセラミック】
セラミックとプラスチックを混ぜ合わせた素材。セラミックが混ざっているため欠けにくく、プラスチックが混ざっているため比較的安価ですが、時間が経つと変色してしまうリスクがあります。

【オールセラミック】
すべてがセラミックでできた素材。自然な見た目で、摩耗することもありませんが、強い力がかかったときに割れてしまうリスクがあります。

【ジルコニア】
セラミックの一種で、特に審美性に優れた素材。自然な美しさがあり、噛み合う歯に負担がかかりにくいのも特徴です。

新宿スワン歯科・矯正歯科 院長より

インプラントの人工歯(上部構造)は様々な素材があります。見た目、耐久性、コストなど、患者様が重視するポイントによって最適な素材は変わってきますし、インプラントを入れる場所によっても選ぶべき素材は変わってきます。半永久的に使っていくものですから、担当の先生とじっくり相談してくださいね。

次回の歯科コラムは、5月30日(月)の公開を予定しております。ぜひ、お楽しみに。