良くない歯並び(不正咬合)の種類|開咬編

歯科コラム COLUMN

今回は、良くない歯並び(不正咬合)シリーズの第4回として、「開咬(かいこう)」について解説していきます。開咬は、それほど多い不正咬合ではありませんが、放置していると様々な悪影響が及んできます。今は見た目だけが気になっているという方も、今後大きな悩みを抱えることになってしまうかもしれません。本コラムを参考に、できるだけお早めに矯正治療をご検討くださいね。

開咬とは?

開咬とは、口を閉じた状態で、奥歯は噛み合っているのに前歯が噛み合っておらず、常に上下の前歯が開いている状態のこと。別名、「オープンバイト」とも言われます。奥歯でしっかり噛んでいるときでも上下の前歯同士が接触しないのが特徴で、隙間が空いてしまいます。

開咬の原因

開咬の原因は、「遺伝的な原因」と「後天的な原因」に分けることができます。遺伝による開咬は、顎の骨の形態に問題があり、顎の成長とともに進行していくのが特徴です。一方、後天的な開咬の場合は、以下のような要因が考えられます。

・呼吸器系疾患による口呼吸
鼻炎や蓄のう症、アデノイドや扁桃腺肥大など、成長期に呼吸器系の疾患がある場合、鼻がつまりやすく口呼吸になりがちです。この口呼吸が、開咬の原因となるケースが多くあります。口呼吸を長く続けていると唇の筋肉が弱くなり、口腔内の筋肉のバランスが崩れて歯並びが乱れてしまうのです。

・指しゃぶりや舌癖
乳幼児期に指しゃぶりのクセがあると、開咬の原因となります。指を前歯に押し当てていると指の力で上下の歯が動いてしまい、徐々に開咬になっていきます。その他、舌を前に出して前歯に押し当てたり、前歯で舌を軽く噛んだり、舌を出したりするクセも開咬の原因となります。

開咬のリスク

開咬は前歯が閉じないため、見た目だけでなく様々な問題を引き起こします。

・食事の問題
前歯で食べ物を噛み切るのが難しいのが大きな問題です。噛み切るのに不自由をすると、しっかり噛まないまま飲み込んでしまうクセがつき、胃腸に負担がかかります。場合によっては、胃腸障害を起こすこともあります。

・発音の問題
常に上下の前歯に隙間ができているため、話をするときに息が漏れて不明瞭な発音になってしまいます。特に、サ行・ザ行が聞き取りにくい発音になってしまいます。

・ドライマウス
開咬の方は唇を閉じにくく、開きがちになります。唇が開いている時間が長いと、ドライマウス(口のなかが常に乾燥した状態)になり、唾液の分泌量が減少します。そうなると、口腔内に細菌が増殖しやすくなり、虫歯や歯周病、口臭を招きやすくなります。

・その他のトラブル
前歯が噛み合わないため、常に奥歯で物を噛みます。そうなると、顎の関節・筋肉も疲労しやすいため、顎関節症になる確率が高くなります。また、奥歯に必要以上の負担がかかるため、奥歯の詰め物・被せ物が外れやすくなったり、奥歯が破折したりするケースもあります。

開咬の矯正治療

開咬の程度によって矯正治療の方法は変わってきますが、小児期では良くないクセを改善するとともに、必要に応じて矯正装置を使って歯並びを整えていきます。混合歯列期であれば、歯を抜かずに矯正できる可能性も高くなります。

大人になってから開咬を改善する場合は、ワイヤー矯正やインビザラインなどのマウスピース矯正によって正しい歯並び・噛み合わせにしていくのが一般的です。顎が狭く、どうしても歯を動かすスペースがない患者様の場合は、奥歯を抜いてスペースを確保する場合もあります。こうした場合は、事前にお口の状態と今後の治療についてしっかりと説明してくれる歯科医院を選ぶことが大切です。

次回は、「過蓋咬合」について、原因やリスク、矯正治療方法など詳しく解説していきます。